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【タイトル】 こたつ/舌

「こたつ」

 その子は、
こたつの中で産まれた。
茶褐色の、柔らかい、小さな
子供だ。
何かの、ぬいぐるみに似ている。

なにも学ばず、なにも遊ばず、目は閉じたまま。
腹が減ると、毛布を食らった。
その子はときおり、こたつのそばに出て、
少し、
這い這いをした。
それが、そいつの一生だった

その茶褐色の赤ん坊は、
こたつの中で産まれて
こたつの中で、
ある朝、
死んだ。


「舌」

舌は、冷えた
星空の下で。
舌は、冷えた
時代の底で。
舌は、味わった
女の性器を。
舌は、喋った。
裏切った者どもの過去を。
舌は、舐めた
地球の裏側を。
舌は、曲がった
宇宙の曲率に。
舌は、へばりついた
深夜2時の高速道の冷たいアスファルトに。

そのような宿業を沁みこませた呪われた舌は最後に、 
銀色のナイフによって
真中からすっきりと刺身のように断ち切られ、
鋭い桃色の二つの肉片となって、
激しくふるえながら世界の両極を指し示した。

【Write-Up】文芸サイト応援マガジン 第66号 2002年4月20日発行


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