佐藤智美

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【タイトル】
転迷開悟/淋し気な大人達/肥沃な大地/孵化/気ままに/鮮烈な世界/英雄の孤独/群集/熟れた果実/輪廻転生/泉/艶/成長
「転迷開悟」

現実と理想。日常と夢。過去と未来。
二つの世界を隔てる壁の前で
自我が 震えている。
迷っている。闘っている。

「この柵を越えるにはどうしたら良いのだろう」

【Write-Up】文芸サイト応援マガジン 第63号 2002年3月30日発行


「淋し気な大人達」

生きのびるとは 
なんて悲しい事なのだろう

私利私欲に犯された 権力者が
大勢の罪なき人の首に 鎖をつけ
夢と自由を奪い 鞭を振り下ろす

我が身を かばいながら
大きな声に 従い
流されていく 大人達の群れ
道に倒れる人を 見て見ぬふりして
誰もが 足早に通り過ぎる

結局は 誰もが 
自分のことしか考えられない

それを 当たり前のように
今日も 流されていく
淋し気な 大人達の群れ

「肥沃な大地」

この世界は 無限大
広すぎて選べないなんて
臆病にならないで

そこは空虚の闇かもしれない
そこは血塗られた戦場かもしれない
でも心の声に従い 挑み進んで
あなたが見つけたものは 価値ある宝

肥沃な大地になりなさい

清濁あわせのむ 母なる大地
あなたに抱かれた 草木の芽たちは
すくすくと逞しく 立派に育ち
やがて真っ赤に熟れた 大きな実をつけて
世界を 豊かな楽園にするでしょう

肥沃な大地になりなさい

血にまみれた屍たちを 優しく包み込み
罪といっしょに 浄める大地
悲しみに 凍てついた魂も
憎しみに 焼けこげた魂も
すべて 柔らかく溶かされて
安らぎと微笑みが 戻るでしょう

肥沃な大地になりなさい
すべての生を司る場所

広い大きな大地になりなさい

「孵化」

冬は春の準備段階。

凍えた風の攻撃に 
蹲り じっとがまんの幼子。

固い防壁を身に纏って 眠る蛹は 
いつか あたたかな光と空気に
祝福されて 蝶になる。

「よくがんばったね」と。

【Write-Up】文芸サイト応援マガジン 第62号 2002年3月23日発行


「気ままに」

修復不可能ならば 再生できる所へ。
叶わぬ望みは ばっさりと切り捨て。

心は何度でも生まれ変われるのさ。

自由に飛翔する翼さえあれば。

「鮮烈な世界」

鮮烈とはナイフで生肌を切り裂く瞬間。

鮮血の吹出る傷の痛みを引き受ける
勇気があるなら止めはしないさ。

痛みよりもじわじわ流れる
血の温かみに陶酔してみるがいい。

まだ何も知らない子供に還って
世界を夢想してみるがいい。

ご安心を。

大人の面で幾ら世界を秤にかけたって、
正しい答えなど出るわけないのさ。

君にとって一番正しいものは
君自身が編集した世界なのさ。

【Write-Up】文芸サイト応援マガジン 第61号 2002年3月9日発行


「英雄の孤独」

光り輝く叡智は 時に人を傷つける
凡庸の中で 本当の非凡は孤独を歩む

掲げる理想と 守るべき砦
それが 残された生きる証

身を斬るような痛みを 掻き消すために
あなたはまた すべてを塞いで疾走する

ひとりでは癒せない傷を抱えて
鎧の下で窒息するあなたの素顔を 
一体誰が知るというのだろう

「群集」

都会に充満する退屈と好奇心
乾いた喉を潤す何かを求めて 
うねるように流されていく 人々の群れ
華やかな栄光を夢見る 道化師達が
次々に繰り出す 瞬間芸
それは まるで 花火のように 
ぱあんと はじけては消え はじけては消え
やがて彼等の姿さえ 跡形もなく消え去っても
また 乾いた喉を潤す何かを求めて
街にうねるように流されていく 人々の群れ

【Write-Up】文芸サイト応援マガジン 第60号 2002年3月2日発行


「熟れた果実」

花は 散る運命
種子は 肥沃な大地に生れ
やがて 自然の洗礼を受けて
逞しく 成長する

熟れた果実を さあ
手にとって かじってごらんよ

その実が甘いのは 
大地の恵みと 自然の厳しさを
知っているからさ

【Write-Up】文芸サイト応援マガジン 第50号 2001年12月15日発行


「輪廻転生」

まわる まわる 運命の輪廻
知られざる 因縁と因縁を繋いで
押し流される 無力な魂は
懇願しながら 過去を振り返り
そして驚愕する

幾千年の 気の遠くなるような時に 
命を繋いできた 死者達の声が
現世を生きる私の 胸元で
静かに そして激しく こだまする 

それはただ 悲壮なまでの 愛情
成仏できなかった 無念の思いが
現世を生きる私の 胸元で
静かに そして激しく こだまする 

再生の時は 近づいている
満たされぬ愛と 傷付いた心が
血を流して 今も彷徨うなら
何をもって 癒す事が出来る

眼をそらす事はできない
そう 知ってしまった以上

すべてを 安らかに葬り去るまで

「泉」

女は 闇が怖かった

愛は 形なき水のように
止めどなく 湧き出るまま
潤すものを 激しく欲していた
形あるものに 収められることを
激しく 望んでいた

ただひとつ 恐れていたのは
形あるものを 何の前触れもなく
突然 失うことだった 

【Write-Up】文芸サイト応援マガジン 第47号 2001年11月21日発行


「艶」

なにも望まない
あなたがこの広い大地で悠々と羽を広げ
雄々しく旅立てるのなら
私はゆったりと構える豊穣の大地になりましょう

私の奥深くから湧き出るこの泉は止められない
押し込められている私の中の果実が
赤く熟れて蜜を滴らせ食べられるのを待っている

鏡よ鏡 この地上でもっとも美しい私の唇
花を眺めその色美しさと一体になりたい
地上を走る柔らかい風は堅い枠に囲われた温もりを解放し
生まれたままの自然へと返しておやり
白い白い雪ん子のような頬は神から授けられた魔法の宝
感じるままに 感じるままに
さあ この扉を開けておくれ
そしていままで見たことのないような魅惑のほほえみで
この世界を魅了しておくれ

さなぎよ 私の中にねむれるさなぎ 
このあたたかな風を受けて蝶になれ
私の中に静かにねむる 女を解き放て

「成長」

あなたが 成長する時
あなたの過去は 必要無くなるだろう
思い出は 時の彼方に消えるだろう

それまで あなたを支えてきた
優しい笑顔 柔らかい唇
手の温もり 眩しい時間

悲しみが 気の遠くなるような時を超え
やがて 一つの答えを導き出す時

あなたは 新しい風を受けて
しなやかに 生まれ変わるだろう

そして あなたの中で 止まっていた
時計の針が また静かに動き出すだろう


そして あなたが憧れていた
優しい笑顔 柔らかい唇
手の温もり 眩しい時間

いつしか あなた自身の魅力となって
必ず 誰かを幸せにするだろう

【Write-Up】文芸サイト応援マガジン 第39号 2001年9月26日発行


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